インタビュー 2019/01/22

テレワークは企業にとってもプラスなの?導入を支援している企業に「実態」を聞いてみた Reporter : 高杉

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2018年に多方面からスポットライトを浴びて話題になった「働き方改革」という言葉。
経営者や人事担当者のなかには、「ウチもやらなきゃ」「そろそろ本格的に見直さなきゃ」と焦りを感じている人も多いのではないでしょうか。

そんな各社の働き方改革プロジェクトのなかで、ひときわホットなキーワードとなっているものに
「テレワーク」があります。テレワークは離れた場所を意味する「テレ(tele)」と仕事を意味する「ワーク(work)」を組み合わせた造語で、さまざまなICT(情報通信技術)を活用し、場所や時間を有効に活用できる柔軟な働き方のことです。

テレワークの導入を検討している会社は多いと思いますが、現時点で「メリットもデメリットも
イマイチよくわかっていない」というところも少なくないでしょう。
そこで今回は、中小企業を中心に全国でテレワークの導入支援・コンサルティングをしている
テレワークマネジメント様に、導入している企業の「実態」について聞いてきました。

高杉:
代表の田澤さん、よろしくお願いします。

田澤さん:
はい、こちらこそよろしくお願いいたします。

アメリカとは違う、「マネジメント型のテレワーク」とは

高杉:
2018年は「働き方改革」が大きな話題になりました。
テレワークという言葉も、以前に比べて認知度が高まったように思います。

田澤さん:
おっしゃる通りです。私たちがテレワークマネジメントという会社を設立したのは10年ほど前なのですが、当時はほとんどの人がテレワークという言葉を知らず、メリット・デメリットや導入の是非などが議論されることもありませんでした。時代は変わりましたね(笑)。

高杉:
ではなぜ、10年も前からテレワークのコンサルティング会社をつくろうと思ったのですか?

田澤さん:
私は大手メーカーでパソコンの商品企画を担当していたのですが、出産と夫の転勤によってやむを得ず退職しなければなりませんでした。私のように、世の中には働きたいのに「会社に行けないだけ」で仕事を辞めなければならない人がたくさんいるんです。そうした人が仕事を辞めずに働けるようにしたい、在宅でもしっかり働ける社会を実現したい――。
そんな思いから、テレワークマネジメントという会社をつくりました。

高杉:
当時、成功事例の見本となる会社がほとんどない状態だったのでは?

田澤さん:
見本どころか、市場もなければニーズもないという状況でしたね。
でも私は、自分のような人がこれから増えていくだろう、テレワークという働き方が必要になってくるだろうと予想していました。実際、少子高齢化にともなう労働力不足、ライフスタイルの多様化などによってテレワークを導入する企業が増えてきましたよね。
この流れはさらに加速していくだろうと思っています。

高杉:
社名に「マネジメント」という言葉が付いているのですが、「テレワークをマネジメントする」とはどういうことなのでしょうか?

田澤さん:
私がテレワーク先進国のアメリカを視察したとき、そこで確信したのは「アメリカ流のテレワークは日本で普及しない」ということでした。
分かりやすく言えば、アメリカと日本では仕事のやり方・考え方が全然違うんです。

高杉:
両者の違いを具体的に教えてください。

田澤さん:
アメリカは、「ほったらかし型のテレワーク」です。
とことん成果主義の国で、どこでどんな仕事に何時間かけても成果が出ていれば評価されます。
その代わり、成果が出ていなければ「明日から来なくていいよ」という世界。個々の成果が非常に明確化されおり、「個人主義」と言えるでしょう。

一方の日本は「大部屋主義」と言われるように、チーム全員で連携して目標を達成するような考え方が主流です。
成果に対して報酬を支払うアメリカに対し、日本は時間に対して報酬を支払います。成果が出ないからと言って、簡単にクビを切ることは契約上できません。

アメリカと日本にはこうした大きな違いがあるため、テレワークを普及させるにはこの国の働き方に合った「マネジメント型のテレワーク」が必要だと感じました。
人材の問題、生産性の問題、コストの問題、残業の問題。
これらはテレワークで解決できますが、「ほったらかし型のテレワーク」ではうまくいきません。
どんな壁があるのかを正しく伝え、乗り越える方法を教えて支援していく――そこに私たちの存在価値があると思っています。

「まずは制度」「とりあえず就業規則」では
うまくいかない

高杉:
「テレワークの導入は難しい」と考えている人事担当者も多いと思いますが、実際はどうなのでしょうか?

田澤さん:
テレワークの導入に関しては、「セキュリティが心配」「膨大なコストがかかるんじゃないか」
「生産性が下がるんじゃないか」と考えている経営者や人事担当者が少なくありません。
実は、こうした後ろ向きな姿勢がテレワークの有効活用を難しくしてしまっているという側面もあります。

そもそもテレワークは、「休むため」ではなく「働くため」に導入する制度です。
福利厚生の一環と考えている人もいますが、それは正しくありません。
本来は社員が「最も成果を出せるように」「最も働きやすい方法で生産性を最大化できるように」採り入れるべきものであり、「子育てのためのテレワーク」は女性社員に貢献してもらうための働き方のひとつにすぎないのです。
そこを勘違いしてしまうと、実現すべき成果や生産性につながらない施策になってしまいます。

高杉:
実際に田澤さんが目にしてきた「よくある失敗例」などはありますか?

田澤さん:
こういった言い方がよいのかは分かりませんが、テレワークの導入自体はさほど難しくないんです。
ただ、導入した制度を活用して「生産性向上」「経費削減」「売上増加」「離職率低下」
「採用活動の成功」といった目的を達成するのは意外に難しいですね。

よくある失敗例としては、導入自体が目的になってしまうケースがあります。
「まずは制度」「とりあえず就業規則」と考えているところはうまくいかないことが多いかもしれません。いくら制度を導入しても、活用されなければ意味がないからです。

「サボっているんじゃないかと思われるのがストレス」「同僚に迷惑をかけてしまいそう」
「評価が下がるなら使いたくない」といった声は実際にあります。
社員にこう思われてしまうと、活用は進みませんよね? 経営者や人事担当者は、こういった声に配慮しながら制度を浸透させていく必要があります。

高杉:
制度をつくるだけでなく、利用しやすいような環境を整備することも重要なんですね。

田澤さん:
それともうひとつ。「まわりの会社がやっている」「友人の経営者がやっている」という理由で
テレワークを導入するのもリスクが高いと言えます。
たとえば、社長が人事部に対して導入を指示したとしましょう。人事部で何人かが試験的にやってみる流れになると思いますが、人事部が社長の意を汲んで事をうまく運びたいなら、このタイミングではたいてい問題など起こりません。
しかしこういったケースでは、実際に制度としてスタートさせてから「うまくいかない」となってしまうことが多いのです。

管理職と言われる層がテレワークのメリットや取り組む価値を正しく理解していないと、
「部下に使わせたくない」「部下も使いにくい」という状況に陥りやすくなります。
こうした状況では、いくら研修をしても意味がありません。
ですので、私たちは全社で前向きに取り組んでもらうことを最重要視し、経営陣からトップダウンで正しく伝えてもらう方法をアドバイスしています。

テレワークを利用するのは、はじめは女性が多いと思います。
その女性が嫌な思いをしたり、使いたがらなかったりするようではうまくいきません。
他の社員には「みんなの未来のため、会社の未来のために彼女たちが先陣を切ってくれている」ことを伝え、積極的に協力してもらうような雰囲気をつくるのが望ましいと言えるでしょう。

テレワークはあくまで
パフォーマンスを最大化するための選択肢

高杉:
「在宅でやれる仕事が少ない」という理由から、導入する必要性を感じていない中小企業もあるかと思います。

田澤さん:
そうですね。ですが実際は、そういう企業のほうが導入の必要性は高いんですよね。
多くの中小企業は、必要最低限の人材しか抱えていません。そんななかで「育休を取得したい」
「親の介護で退職を考えている」という社員が増えてしまったら、どうなるでしょうか?

高杉:
人がいなくなって困りますね。事業が成り立たなくなるかもしれません。

田澤さん:
その通りです。しかも世の中には採用で悩んでいる企業も多くあり、募集したところで理想的な人材を確保できるとは限りません。そういった状況になってはじめて危機感を持つようでは遅いのです。
どのような会社にも「辞めてもらっては困る」という人材がいるでしょう。そういった重要な人材を引き留め、会社のために貢献してもらう選択肢として、テレワークがあるのです。

高杉:
企業がテレワークを導入したい場合、まずやるべきことは何でしょうか?

田澤さん:
総務省のデータ(平成29年通信利用動向調査)によれば、テレワーク制度を利用している従業員が5%未満の企業が51.4%もあるそうです。これは、テレワークがごく一部の人のための制度になってしまっていることの表れと言えるでしょう。
こうした結果を避けるために、まずは会社にどういう課題があるかを把握し、テレワークを使ってどんな未来を実現したいのかを明確にすることが重要です。

テレワークを採り入れない理由に「適した仕事がない」という意見もありますが、私たちはそこから意識を変えなければならないと考えています。なぜ会社に出勤するのか……考えたことはありますか?

高杉:
効率よく仕事をするためでしょうか?

田澤さん:
そうですね。正確には、効率よく仕事をするために必要な「仕事道具」と「仕事仲間」が会社に存在するからです。ですが、いつでもどこでも仕事ができたり会話ができたりする環境さえあれば、会社に行かなくてもよくないですか?

従来のテレワークはICTのおかげで自宅でも切り分けて作業ができるものの、基本は道具と仲間が会社にあります。
私たちが目指すテレワークの形はそうではなく、道具や仲間とクラウド上のネットオフィス
(以下の写真はイメージ)でつながり、遠くにいる人とも近くにいるような感覚で一緒に仕事ができる状態です。
スケジュール帳、会議室、タイムカード、電話、ワークフロー。これらは、ツールを使えばすべてクラウド上に置くことができます。つまり、リアルなオフィスにいなくても業務に支障をきたさないということです。

先ほど「積極的に協力してもらうような雰囲気をつくるのが望ましい」と言いましたが、重要なのはこうした仕組みをテレワーク対象者だけでなく、普段から全員が使うような環境を整えることです。
そこを目指さなければ会社としてのメリットは得られないでしょう。重要なのは、「いつものやり方」を全社的に変えることです。

高杉:
そういう意味で、経営者や人事担当者の考え方や取り組み方が大事になってくるんですね。
最後に、田澤さんからメッセージがあればお願いします。

田澤さん:
「会社に行けない」というだけで辞めざるを得ない人もいます。その一方で、「自分は会社に行きたい」という人もいます。
テレワークとはあくまでパフォーマンスを最大化するための選択肢であり、「テレワークに100%移行すべき」と言いたいわけではありません。
会社として求める成果を得るために、そして社員が自分の価値を存分に発揮するために、最適な仕事環境が実現すれば両者にとって幸せだと思います。

高杉:
ありがとうございました。

今回はテレワークマネジメント代表の田澤さんに、テレワーク導入の実態や注意点などをうかがいました。テレワークは単なる福利厚生の一環ではなく、社員のパフォーマンスを最大化するための手段であるというお話が印象的でしたね。

今後は副業・兼業を認める企業も増加すると予想され、より多様な働き方が求められる時代となっていくでしょう。
みなさんにとって大切な人材がずっと働ける会社であるにはどうしたらいいかを考えたとき、やはり重要なのは「働き方改革」なのだと感じました。
ここに本気で向き合っている企業は、これからどんどん強くなっていく気がします。

株式会社テレワークマネジメント
住所:
〒102-0084 東京都千代田区二番町7-15-102(東京オフィス)
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