インタビュー 2018/07/26

バーのマスターから学ぶ、経営を支える
「接客と人材育成」の相互作用 Reporter : 今泉

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こんにちは、今泉です。

バーというと昔は大人な紳士や淑女が通うイメージでしたが、今ではいろんなコンセプトのバーができて若い人でも入りやすくなりましたよね。
そして欠かせないのがバーテンダーさん。シェーカーを振る姿や静かにカクテルを注ぐ仕草がとてもカッコイイですよね。
しかもバーテンダーさん、スタッフさん共にとても気持ちの良い接客をしてくれます。
そこでふと湧いた疑問が、バーの経営や、人材育成の工夫ってどうやっているのかな?というもの。
バーってあまり宣伝しているところを見かけない気がしますが、どうやってお客さんを獲得しているんでしょうか。
それにスタッフさんの完璧な接客、やはり特別な人材育成方法があるのでは……?
というわけで、あまり知ることのないバーの裏側について知るべく、市ヶ谷にあるBAR 9DAN SLEUTHのマスター石塚さんにお話を聞いてきました。

今泉:
本日は宜しくお願いします。

石塚さん:
宜しくお願いします。

石塚さんとバーとの出会い

今泉:
さっそくですが、石塚さんがバーのマスターになったきっかけは何でしょうか?

石塚さん:
私は千葉の出身でして、最初は幕張のホテルに就職していました。
ホテルの中にあるフランス料理店では隅にバーがあったので、そちらで働いていました。
ですが、当時の私はお酒に関する仕事をメインにしてもっとスキルアップしたいという思いがありまして。
また、当時ホテルでお世話になっていた先輩は街場のバー出身で、話を聞いているうちにバーテンダーって面白そうだな、と。
そう思ったときに、やはり千葉よりは東京で働いたほうが技術を磨けるのかなと思い上京しました。
やはりお世話になった方のお話は影響が大きかったですね。そこから求人誌を見てこの店に応募し、現在に至ります。

今泉:
今思うとタイミングがとても良かったんですね。お酒に関わる仕事をしたい、というのは前から決めていたんでしょうか。

石塚さん:
そうですね、やはりお酒が好きだったので。
もともと父親が職人で、親戚が集まると必ず宴会が始まったりして、お酒自体に抵抗が無かったんですよね。
それに、地元にバーっていうものが無かったんですよ。変な話ですけど、「デートでバーに行く」ってお洒落に聞こえませんか?(笑)
ですからバーがどんな感じなのかを見に、友達と千葉駅のほうまで行ってみたり。その時からカクテルやウィスキーには興味を持っていましたね。
もちろんホテルに就職した際も料飲サービスをやりたいと決めていました。

今泉:
確かにバーって何故だかお洒落な雰囲気がありますね…!最早バーにいるというだけでお洒落度が上がる気がします。
バーに行くと後ろの棚などにずらっと多くの種類のお酒が並んでいたり、カクテルだけでも豊富な種類がありますがどうやって覚えていくんですか?

石塚さん:
私の場合、飲んで順番に覚えていきました。
まずはウィスキーから始まって、バーボンの次はスコッチにいこうかなという感じで。
技術で言えば、カクテルとかは練習あるのみだと思いますね。
若い頃は他のお店に勉強しに行ったりもしました。一般客のふりをしてお店の所作を見たり。

あとは、副素材に関してもちゃんと味を知っておくようにしています。
レモンとかも、収穫された時期や大きさで酸っぱさって変わってくるじゃないですか。
素材の味をちゃんと見極めていかないと、味のバランスが取れなくなっちゃうんですよね。
そういったことも自身で体験するようにしています。
でも、未だにお酒の試作をするときは酔っ払っちゃいますね(笑)

お客さんと寄り添う経営で、「地域一番店」を目指す

今泉:
いろんなコンセプトのバーがありますが、こちらのお店ではどんなコンセプトを設けていますか?

石塚さん:
お客さんが気軽に立ち寄れるお店でしょうか。
かっちりしたオーセンティックバーに行くと、注文がしづらかったり、ワイワイしてはいけないのかなと思わせる雰囲気があるじゃないですか。
入るのに勇気がいるというか。そういった雰囲気をあまり作りたくないなと思っています。
少しくだけた対応になってしまうときもありますが、みなさんが純粋にお酒や空間を楽しんでもらえたら良いですよね。
バーに行き慣れていないと、ウィスキーとか頼みづらくありませんか?銘柄も多いですし、値段も気になると思います。
なので、そういった部分でお客さんに気を使ってほしくないですね。
例えば、当店では気軽に試飲もしてもらえます。さすがに飲んだことのないウィスキーにお金を出してもらうのは申し訳ないですから。
私がお客さんとしてバーへ行ったときにどんなお店だったらいいか、そういったことをベースに考えています。
今後も、お客さんに寄り添った店にしていきたいですね。

今泉:
私も最初は入るのに躊躇していました…。何を頼むか迷っているときにマスターやスタッフさんに話しかけてもらえるとホッとします。
試飲もできるのはバー初心者にとってかなり嬉しいサービスですね。そんなお店の目標は何でしょう?

石塚さん:
地域一番店です。
バーテンダー協会にも入っていて横の繋がりはありますが、基本的にはこの街との繋がりや交流を大事にしたいと思っていて。
やはりお客さんとの繋がりはおろそかにできないです。
当店は広告掲載や宣伝をしているわけでは無いので、経営し続ける上で新規のお客さんをいかに獲得するかという課題が常にあります。
そういった課題がある中で、常連さんの繋がりから2回目、3回目とリピーターのお客さんが生まれることもあり、お客様同士の交流に大きく助けてもらっています。
もちろんそこだけに頼らずに、上手くやっていかなければいけない、という課題はありますが。
そういった意味でも、地元の方とお付き合いしながら地域に根付いたお店になれたらいいなと。
市ヶ谷ってあまり外から人が来ないんですよね。新宿や神楽坂が近いので、どうしても選択肢から外れてしまう。
でもオススメのバーがあるからそこに行こうよって言ってもらえるお店になりたいですね。

今泉:
お客さんとの交流が大きく経営にも関わってくるんですね。
では、お客さんとの交流で意識していることはありますか?

石塚さん:
常連さん、新規のお客さん関係無く接することですかね。
スタッフとお客さんの交流がバーの醍醐味でしょうし、常連さんもそういった交流を目的に来てくださる方も当然いると思います。
ですがあまりそういった色を濃く出してしまうと、新規のお客さんは一歩引いてしまうと思うんですよ。
もちろん常連さんとの交流も大事ですが、新しい方とも同じように交流していきたいですね。
私もそういったことを肝に銘じて、分け隔てなく気配りができるお店にしています。

これはスタッフの人材育成という点でも大きく意識している点ですね。
常連さんとは笑顔だけど新しい方には緊張してしまっているよ、というアドバイスをしたり。
スタッフが辞めるときに常連さんを送別会に招待することもあるので、
そういった雰囲気を出してしまうのもしょうがないかもしれませんが、なるべく表に出さないように指導しています。
難しいとは思いますが、どなたにも同じような対応をしたいですからね。

人材育成の肝は「自分で考えて行動してもらう」こと

今泉:
採用活動は主にどんなことをしていらっしゃいますか?

石塚さん:
求人媒体への掲載や、チラシの作成、既存スタッフからの紹介、主にこの3パターンですね。
求人媒体には毎年3回ほど掲載しています。チラシは自分たちで作ったものを店頭に貼っていますね。
意外とチラシの募集から来てくれる方が多く、長く続けてくれる子が多いです。
ただ、年々募集数が減ってきているので人材不足の解消も難しくなってきています…。
そこは何とかしないといけない課題ですね。

今泉:
チラシからの募集が一番多いのは少し意外でした。採用活動をするにあたって、どのような人が理想的でしょうか。

石塚さん:
基本的には素直で笑顔ができる子が理想ですね。特に学生さんは。
バーのスタッフはお客さんと話すことも多いので、基本的なコミュニケーションマナーができる人じゃないと難しいと思います。
話が下手でも良くて、ちゃんと人の目を見て話しができるかなど面接の際に確認していますね。

今泉:
お話を聞いていると石塚さんは相手の立場に立って何が最適かを真剣に考えていらっしゃるな、という印象を受けました。
こういったことも1つの要因だと思いますが、お店を長く続けることができる秘訣は何でしょうか?

石塚さん:
正直分からないです(笑)
スタッフに助けられたっていうことは過去に何度もあったので、そこは大きいかな。
私だけでお店を続けていくことはできませんから。
厳しく注意した時もありますけど、ついてきてくれたスタッフのおかげで続いていると思います。
お客さんも、そういったスタッフやサービスを気に入ってくれているのかもしれないですね。

あと、人の顔や名前を覚えるのが割と得意なんですよ。
どうやったら覚えられるんですかってよく聞かれたりしますね。自分でも何故かは分からないんですが。
もちろん自分なりに、頂いた名刺にメモをしたり特徴を覚えたりはしますよ。
そうやって2、3回目に来店したお客さんの反応を大事にしています。
お客さんへの対応って、あまりカッチリとしたマニュアルを作れないんです。
だからスタッフにも自分で考えて接しなさいと指導しています。当店ではこれが人材育成の基本になっていると思います。
2回目に名前呼ぶだけでも違うよ、とか「いらっしゃいませ」ではなくて「XXさん、いらっしゃいませ」と言ってあげるとか。
こういうことって私だけではなく、みんなでやると印象も変わってくると思うので。
お客さんへの対応をみんなで一生懸命考えてきたことが、ここまで続けてこれた秘訣かもしれません。

今泉:
石塚さんのお客さんへの思いが自然とスタッフさんの教育にも繋がっているんですね。

石塚さん:
そうだといいんですけど(笑)

今泉:
きっとお客さんにも石塚さんの思いが伝わっているんじゃないでしょうか?
今回は普段知ることの無いバーについてお話を聞くことができ、とても貴重なお時間でした。
本日はいろいろとお話していただきありがとうございました!

石塚さん:
ありがとうございました。

やはり、バーでの完璧な接客は並々ならぬ思いで構成されたものだったのですね。
自分で考えてもらう、という一見シンプルな人材育成方法ですがお客さんに対しての効果は絶大ではないでしょうか。
マニュアルではない臨機応変な対応をしてもらえるとお客さん側も嬉しくなりますし、そういった対応が一種のマーケティングにもなり得るかと思います。
サービス業を経営している方々も参考にしてみてはいかがでしょうか?

BAR 9DAN SLEUTH
(バー・クダンスルース)
住所:
東京都千代田区九段南4-6-10 GSK九段南ビル 2F
営業時間:
[月~金]18:00~翌2:00(L.O.翌1:30)
[土]18:00~24:00(L.O.23:30)
電話:
03-3288-9517
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