インタビュー 2019/06/28

障害者雇用に求められる「らしさ」。
理念や取り組みをパイオニア企業に聞いてきた Reporter : 高杉

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去る2018年4月に、改正障害者雇用促進法が施行されました。
民間企業の法定雇用率が「2.0%→2.2%」に上昇、対象となる事業主の範囲が「従業員50人以上→45.5人以上」に変更されるなど、障害者雇用の面で大きな変化があったことをご存知の経営者・人事担当者の方も少なくないでしょう。
新たに障害者雇用を検討したり、障害者雇用のあり方を見直したりしている企業もあると思います。

今回は、障害者雇用のパイオニア企業とも言うべきOKIワークウェル様に、障害者のスタッフを迎え入れるにあたってあらかじめ準備しておくべきこと、大事にすべき考え方、気を付けたいことなどについて聞いてきました。
障害者雇用に不安や課題を感じている経営者や人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

高杉:
どうぞよろしくお願いします。

堀口さん:
株式会社OKIワークウェルの代表を務めている堀口です。
よろしくお願いいたします。

「活躍してもらうこと」を求めるスタッフ採用

高杉:
OKIワークウェルは、もう20年近くにわたって障害者雇用を行っていると伺いました。どういった会社で、どんな事業を手がけているのでしょうか?

堀口さん:
私たちOKIワークウェルは、2004年の4月に特例子会社を目指して誕生した会社です。社員の大半は「OKIネットワーカーズ」と呼ばれる重度肢体障害者による在宅勤務チームのスタッフで、彼らのスキルを活かしてホームページ制作、パンフレットなどのデザイン、社内インフラシステムの開発、各種データ入力作業などのIT関連業務を行っています。

会社が設立したのは2004年ですが、OKIネットワーカーズが誕生したのはそれよりも前、1998年のことです。もう20年以上前ですね。最初は3名でしたが、そこから少しずつスタッフが増え、今(2019年5月現在)では85名になりました。その中の72名がなんらかの障害を抱えており、うちネットワーカーズとして54名が在宅で勤務しています。

高杉:
採用に関しては「誰でもいい」というわけにはいきませんよね? IT関連業務には相応の知識やスキルが求められます。

堀口さん:
その通りです。私たちは会社としてクライアントに成果物を納品する役割を担っているので、その制作にあたる障害者スタッフを採用するにあたってはいくつかの条件を設けています。在宅雇用の場合には、以下のような条件になります。

まずは、通勤が困難な重度肢体障害者であること。そして、1日6時間以上の在宅勤務が可能なこと、きちんと自己管理ができること、仕事に集中できる自分専用の部屋があること、「報告・連絡・相談」がしっかりできるコミュニケーション力があることなどがあります。電子メールやインターネット、「Word」や「Excel」などが使えることも重要なので、経済産業省が実施している国家試験「情報処理技術者試験」に合格できる水準の知識があることも採用条件にしています。

高杉:
面接などの採用活動は具体的にどうされているのですか?

堀口さん:
はじめに電話で何回かやり取りを行い当社が開発して導入しているバーチャルオフィスシステム「ワークウェルコミュニケ-タ」を使って実際に在宅勤務者とのコミュニケーションを体験してもらいます。自己管理やコミュニケーション、業務に関する基礎的な能力をチェックし、最終面接はその方の自宅にうかがって行います。職場となるお部屋の環境を見たり、ご両親や必要に応じてヘルパーさんにヒアリングしたりしながら、当社で問題なく働けそうかを確認します。「勤務時間内は公的なヘルパーさんの助けや介護を受けられない」と法律上決められているので、そういった点も考慮しておかなければなりません。

「可能性を追求する障害者雇用」へのこだわり

高杉:
「通勤が困難な重度肢体障害者」を条件に入れているのはなぜですか?

堀口さん:
当社の前身となる「社会貢献推進室」という部署ができた25年ほど前は、企業の社会貢献活動といえば事業と関係のないものばかりでした。関係がないので、活動資金や関係者の時間がなくなると簡単にハシゴをはずすことができてしまう。そんな状況でした。

ですが、当社はそこで「OKIらしい社会貢献活動」にこだわりました。
これまでの障害者雇用は、「通勤できること」が前提でした。そのため、肢体不自由で「会社に通えない」というだけで、能力を活かして働くことができない障害者の方が多くいました。そういった方に対して「OKIとして何ができるか」を考えた末、「可能性を追求する障害者雇用」を目指すようになりました。当時は他に重度障害者の在宅雇用を進めている企業などなかったですし、それをOKIが得意とするコンピューターネットワークのビジネス領域で実現できれば、まさに「OKIらしい社会貢献活動」になると考えました。このこだわりがきっかけで、今に至ります。

高杉:
可能性を追求する障害者雇用……つまり、どういうことでしょうか?

堀口さん:
当社にはWebデザインができる障害者がいます。プログラミングができる障害者もいます。イラストが描ける障害者もいます。障害者の中には、企業の戦力となる知識・スキルを持っている方もいるんですよね。当社の名刺にあるスタッフのイラストも、OKIネットワーカーズのスタッフが描いています。
こういった能力を発揮してもらうために環境を整えること、つまり「おうちにいてもオフィスと同じように孤独感がなく働ける環境をICTで実現することが「可能性を追求する障害者雇用」であり、私たちの役割だと思っています。

高杉:
業務にアサインするということは、障害者の方にも大きな責任が発生しますよね。

堀口さん:
障害者の方は、ものすごく仕事に対する責任感を持っています。その意識が強いのは、働けること自体をポジティブにとらえているからかもしれません。
なんとなく「仕事したくないな」と感じる瞬間は多くの方にあるかと思いますが、障害者の方と話すと、そう思っていた自分がどんどん恥ずかしくなってくるんですよね(笑)。それくらい、仕事仲間を前向きにしてくれる力が彼らにはあります。

高杉:
在宅勤務でしかも楽しいと、時間を忘れてどんどん仕事をしてしまいそうですね(笑)。

堀口さん:
だからこそ、やりすぎないように管理してあげることが大切です。障害者の方のペースに任せると、やりすぎて体調を壊してしまいますからね。

当社では、コーディネーターと呼ばれるスタッフがクライアントとの間に立ち、調整を行っています。納期が遅れそうな場合は担当者に事情を説明し、「月曜は通院したいので勤務時間を減らしたい」といった要望があれば柔軟に対応します。
業務が偏ったら、他のメンバーにフォローしてもらえるように振り分け直します。そういったコントロールもあり、担当者は無理なく作業を進めることができるのです。

案件の稼働をチェックしたり、改善を促したりするのもコーディネーターの仕事です。
たとえば、「今6時間でやっている作業を4時間でできるようにしましょう。そして残り1時間は『考える時間』に、もう1時間は自己啓発に使いましょう」と言ったりします。
それによって、担当者は作業時間を短縮する方法や空いた時間の使い方を自分で考えるようになり、結果として業務効率の改善やスキルアップにつながるというわけです。

重要なのは「始める」ではなく「継続する」こと

高杉:
障害者を雇用するにあたって、特に意識していることはありますか?

堀口さん:
重要なのは「始めること」ではなく、「継続していく仕組みを作ること」です。
スタッフにできるだけ長く勤めたいと思ってもらえる会社にしたい、という点は意識していますね。仕事を通して楽しさを見つけたり、成長を実感できたりする環境を求めているのは、障害者も健常者も同じですから。

現在、働き方改革という文脈の中で「女性活躍のロールモデルが少ない」という声を耳にすることがありますが、実は障害者も同じように「ロールモデルが少ない」と言われることがあります。
そうした声がなくなるように、成功事例を増やしていくことも私たちは意識しています。

その一環として、特別支援学校などの生徒さんに対する出前授業や、当社独自のコミュニケーションツールを使った遠隔での社会見学、職場実習の指導などにも取り組んでいます。講師を務めるのは、実際にOKIワークウェルで働いている障害者スタッフです。
身体に障害があっても多様な働き方ができること、生き生きと活躍できることを、いろんな生徒さんに身をもって伝えてくれています。

高杉:
これから障害者雇用に取り組もう(見直そう)という企業に対し、スムーズな採用のために気を付けたい点があれば教えてください。

堀口さん:
まずは企業として「なにをすべきか」と「なにができるか」を考え、そこで働いてくれる障害者に「なにを求めたいのか」を明確にしておくことが大切だと思います。
これについて時間をかけて考えることが結果的に近道になると思いますし、継続することにつながるはずです。

長く働き続けるほど、成長の喜び、達成感、やりがい、仲間や上司とのつながりといったものへの要求度は高まってきます。そこに対して、会社として応え続けることが重要ではないでしょうか。
合わないと思いながら仕事を続けるのは大変ですからね。企業としては、「すべての人を置き去りにしない」という考え方が必要だと考えています。

高杉:
会社のホームページには、「障害者雇用を通じて明るい社会を作っていきます」というメッセージが掲げられています。堀口さんは、どうしていくことが「明るい社会」につながるとお考えですか?

堀口さん:
障害もひとつの個性であって、ハンデではありません。
障害者を受け入れることは多様性の尊重につながります。「自分が役に立っている」と感じることで、障害者はやりがいや生きがいを感じられるようになります。そして彼らが持てる能力を最大限に発揮してくれれば、会社全体が、ひいては社会全体が生き生きしてくるはずです。
障害者雇用を通じて、こうした世の中を作っていきたいと考えています。

高杉:
ありがとうございました。

今回はOKIワークウェルの堀口さんに、障害者雇用の取り組みを「企業にとって価値のあるもの」にするためのポイントについてうかがいました。障害を個性とみなし、やりがいを引き出すことで会社にはさまざまな好影響が表れます。

障害者雇用を進めるにあたって企業があらかじめ準備しておくべきこと、意識しておくことが見えてきたでしょうか? 障害者雇用について悩みや不安があるなら、OKIワークウェル様の事例を参考にしてみてください。

株式会社 OKIワークウェル
住所:
〒108-8551 東京都港区芝浦4丁目11番17号(本社)
https://www.okiworkwel.co.jp/
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